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川越フィル20周年記念演奏会終了 「新世界」を吹く [オーケストラ]

めっちゃくちゃご無沙汰してしまってすみません。
 川越フィルハーモニー管弦楽団の20周年記念名曲コンサートの本番が終わりました。思いがけず、「新世界」2楽章、あの誰でも知っている有名な「家路」のソロをイングリッシュホルンで吹くことができました。オーボエ吹きなら誰でも憧れる、あのドソロです!まさかこの年になって吹くチャンスがあるとは思っていませんでした。
川フィルには1994年ごろから2001年頃までの7年ほど在籍しましたが、大学の専任教員になると同時に退団しました。そしてずいぶん長くオーケストラとは無縁の生活を送ってきましたが、旧知の団員から川越市主催の第九の演奏会に出ないかと誘われたのが去年でした。川フィルのほうは創立以来在籍していた方が転勤で辞めてしまい、オーボエ奏者が1人になってしまったことから川フィルにも出てくれと声がかかり、常トラ・ただトラ(報酬のないエキストラ)として本番に乗ることになりました。去年の今頃、メインはショーマンの2番でした。そのときの打ち上げで、次は新世界をやるから出てくれと言われ、その前年にJDRで奮発して買った個人持ちのイングリッシュホルンのおかげで、そのソロを吹かせていただくことになりました。
新世界の演奏会は当初は5月に予定されていたのですが、震災の影響で延期になりました。時間はたっぷりあったわけですが、例によってさらう時間がありません。顧問をしている大学の吹奏楽団の演奏会に出たり、仲間と木管アンサンブルをやっていたので、何とか楽器を吹く機会は確保してきましたが、肝心の川フィルの練習には結局9月まではほとんど出ることができませんでした。7月に1回だけ出られたのですが、そのときは指揮の岡田先生が他の楽章を練習する予定だったのを変更してくださいました。またパートリーダーの西山さんは、2ndオーボエからの持ち替えがスムーズに行くように一部2ndの楽譜を演奏してくれたり、ソロの直前はイングリッシュホルンで吹いていいからと言って、オーボエの譜面をイングリッシュホルンで吹くためのFに移調した譜面をわざわざ作ってくださいました。
そんな中行われた先週日曜日の集中練習は惨憺たるものでした。回を追うごとに下手になっていきます。ていうか、最初のFの音にとても神経質になっていて音がかすってしまうのです。逆にアタックが強すぎて汚い音になってしまいます。誰もが知っているこの旋律、この最初のFの音で決まると言っても過言ではありません。ここに期待されるのは柔らかで、はるか遠く離れたアメリカの大地から聞こえてくるような音でなければなりません。そういう感じのほんわりした音をこの一音で出さなければならない・・そう考えれば考えるほど、逆に音が出なくなっていきました。第一、練習も仕事場から駆けつけても定時につけることはほとんどなく、着いてウォーミングアップもなしに、1週間前に吹いたカラカラのリードをちょっと水に浸しただけで吹くのですから、うまく吹けるわけがありませんが・・・
集中練習が終わってこれは毎日練習しようと思いました。幸い自宅が省エネ改修中で防音面でも効果があり、工事が終わった部屋でなら20時ぐらいまでは吹くことができます。しかし結局20時前に家に着いたのは2回だけでした。もう譜面と録音を聴いてイメージをふくらませるしかありません。ゲネプロのあった金曜日はとても大切な委員会があって、終わったのは1720分。前日だからテンションが相当あがっていなければならないのですが、もう脳みその大部分を使い果たしていました。本番当日の土曜日。ほんとは大学の校務があるのですが、演奏会のほうが先に決まっていましたのでさすがにこれは勘弁してもらうことに・・・
午前中は自宅の3階練習です。音程をすべてチェックしてフレージングとかもう一度検討して楽譜に書き込みました。そして、いつもやっていることですが、本番の光景を脳裏に浮かべて緊張の局地の中でFの音を出す。そして賭けですが、タンギングをしないことに決めました。タンギングをするとどうしても音の立ち上がりがはっきりしてしまって遠くから聞こえてくるようなイメージが出せないし、音色も汚くなる。しかししないと、少し遅れてしまい最悪音がでない可能性があります。でも昨日から吹いていてリードの状態は良くなっていたし、こちらに賭けることにしました。その練習を何十回もしました。成功率は7割ぐらいまでになりました。そして楽譜に赤で、気合いを込めて「自分を信じて!!!」と書き込みました。「集中!しかし冷静に!」とも書き込みました。 
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本番前の通し練習では岡田先生は最初の2小節やっただけで「あとは本番よろしく」と言って飛ばしました。通し練習が終わったあと、不安だったので、ひとり居残り練習。とにかく最初のF-AsAsの音形だけ繰り返しゆっくり練習しました。
そして本番ですが、前プロのカルメンでもイングリッシュホルンの持ち替えがあります。しかし新世界のことが時々浮かんで集中力が高まらず、ミスを連発してしまいます。休憩後舞台袖にいるときから最近ではないぐらい緊張しています。本番は客席からは見えないように譜面台にチューナーを置いておきます。1楽章の中でもやはり2楽章のことが気になって2ndオーボエが思うように吹けません。胃がおかしくなってきた・・・いよいよ2楽章。最初のコラールが終わって岡田先生がこっちを向いて・・・Fの音でた! Fから始まるフレーズは8回あるのですが、残念ながら1回だけ失敗しました。あとはミスはなかったけど音程とフレージングがうまくいかなかったところがありました。2楽章が終わったら放心状態に近くて、3楽章以降集中力がもうありませんでした。そしてさらにミスを重ねてしまい・・。イングリッシュホルンのソロがなかったら最低最悪の出来でした。
 全曲が終わり、2度目のカーテンコール。プロの演奏会でもイングリッシュホルン奏者を真っ先に立たせるのでたぶん来るだろうなとは思っていたのですが、立たせるだけでなく、岡田先生が弦楽器をかき分けて僕のところに来て両手で握手してくれました! これは高校以来の楽器人生の中で初めての経験でした。そのあと次々にソロ奏者のところへ行って握手していました。 終わった後、団員から次々に本番が一番良かった、リハーサルの時から今日は違った、いい音だった。癒された。中口さんらしいソロだったと口々にねぎらいの言葉をかけていただきました。
 打ち上げの時にアンケートを見たら、東北のことが思い出されたと複数の方が書いていました。僕自身は震災にあったところを震災前に訪れたことはあったのですが、そこの情景を思い浮かべとるとか言うことはなかったので、聴衆の皆さんにそう思っていただいたのは驚きでした。岡田先生に挨拶に行ったらまた誉めていただきました。先生は通し練習が終わった後、楽屋に戻られて、楽屋にあるモニターで舞台上で僕が練習しているのを見ていたそうです。そして自由に吹かせてあげたいと思ったそうです。でも実際テンポとか思い通りにならなくてごめんねとおっしゃいました。もったいないお言葉です。結構自由にふかせもらいました、ありがとうございましたと申し上げました。 翌日朝早いので、先生に挨拶して中途退席しましたが、早く正団員に復帰してとみんなから言われました。トラでありながら一世一代のソロを吹かせてもらった川越フィルの皆さん、ほんとうにありがとうございました!
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